「共謀罪」の強行可決に抗議する
蓮井 治
蓮井 治
この法案に対しては国民の間でも曽てない規模での反対や危惧の声が広がり、日弁連を始め全国52の弁護士会やペンクラブなどの民主団体・人権団体がこぞって警鐘を鳴らしたことは重く受け止めるべきです。しかし期待は裏切られ、あのような無法と暴挙・強硬手段で成立させてしまったことに先ずは強く抗議したいと思います。そしてアベ政権のもとでは、もはや民主主義は無くなり、多数の横暴だけがまかり通る政治になったと痛感しています。
法案の内容についての詳細には触れませんが、その中の最大の問題点は、「何をしたら罪に問われるのか」がはっきりしていないことです。その点での判断は、すべて捜査機関に任されることになり、捜査対象が自由勝手に拡大されてしまう危険が大きいことです。環境保護団体や人権保護団体はもとより、私たちの「革新懇」や「9条の会」などの活動も捜査・処罰の対象にされかねません。ということは、「政府にとって都合の悪い」存在は全て対象にされるということであり、国民の日常生活のすべてが警察や自衛隊の「情報保全隊」(昔の「憲兵」と同じ軍隊の中の警察)などの捜査機関によって監視されることになります。
国連の人権問題特別報告者、ケナタッチ教授が指摘した懸念の中心もこの点でした。アベ首相は、このケナタッチ報告で示された問題点に何ら答えないばかりか、「強く抗議」する声明を出しました。国際儀礼・ルールの片鱗もない対応で世界に恥をさらしました。
私は戦中派の一人として1931年から始まった15年間のあの日本の大侵略戦争の頃を思い返えしています。戦争遂行の要として「治安維持法」(1925年制定)が猛威を振るい、戦争に反対する人、良心的な愛国者を片っ端から検束して裁判にも掛けずに忙殺しました。小林多喜二や三木清らがその犠牲となりました。この思想弾圧のために送検者は約7万6000人、逮捕者は数十万人に登り、国民の声を圧殺して侵略戦争への道を開いたのです。「共謀罪」は、まさに「治安維持法」の現代版です。
政府は、この法案の説明の中で「ウソ」と「ゴマカシ」を積み重ねました。「一般人には関係ない」、「テロ防止のために不可欠」、「この法案がなければオリンピックが開けない」、「国際条約批准のために必要」などなど。アベ首相も金田法相も答弁不能の陥った事実がそれを証明しています。
ちなみに、「テロ防止」というのであれば、そのための国際条約は13本ありますが、日本はこれら全ての条約締結を完了し、これに基づく国内法も整備されています。「共謀罪」など全く必要はないのです。それを隠し誤魔化すために、国会で過去3回も廃案となった「共謀罪法」を「テロ防止準備法」と看板を掛け替えをしました。「テロ防止」とうたえば国民が納得するという「浅智慧」が見え見えです。
振り返ってみると、アベ政権のもとで2013年に「秘密保護法」、2015年に「戦争法」(安保法制)、2016年に「刑事訴訟法改定」(警察が簡単に盗聴ができる)、それに併せて今回の「共謀罪」は、正に「戦争をする国」づくりの一環であり、その最終仕上げには「憲法改悪」が待ち構えています。
この法案の特徴として指摘したいのは、これが「アベ・ファシズム政権」の本質と「日米軍事同盟最優先」(国民の幸せや福祉は後回し)の政治姿勢がはっきりと国民の前に示されていることです。ですから平和と国民の幸せ、そして民主主義への復帰と尊重を願うなら、一刻も早く「アベ内閣」を退陣させることが緊急不可欠の課題であることを強調したいと思います。
今、「森友・加計事件」の内容が明らかにされ、安倍総理による国政の私物化に対して国民の怒りが沸き起こり、政権は崩壊・転落の崖縁に立たされています。もう一押しの世論を高めることによって政権の完全追放を勝ち取りたいものです。
2017年6月15日 蓮井 治