7年8カ月の安倍政権を振り返る
蓮井 治
【1】安倍・政治の4つの行動規範
安倍首相の悪政とその行動規範を振り返ってみるとき、次の4点が挙げられます。(1) 憲法と民主主義の無視 (2)財界最優先 (3)「最高の責任者は私だ」と豪語し、国民からどんなに批判されても頑なに自説を貫く(4)アメリカ言いなり。 まさに「アホノミクス」・「アベコベミクス」そのものです。このような政治が続くことは許されないことですが,後継候補者の顔ぶれを見ると、すべて「アベノミクス」の追随者であり、新しい政治への期待はできません。 安倍氏は、政界に入った直後から自民党の極右集団に参加し、急速に存在感(?)を高めてきました。1996年には、「明るい日本・国会議員連盟」の事務局長代理に就任、1 997年には、「教科書議員連盟」の事務局長に就き、名うての右翼と連携して先の日本 の戦争を侵略戦争とみなす考え方を「自虐史観」と決めつけ、教科書から「慰安婦」や「南 京虐殺事件」の記述を削除するよう要求した経緯があります。 さらには最大の右翼集団である「日本会議議員連盟」,「神道議連」などに加えて、党内の主要な右翼組織のほとんどすべてに名を連ねていました。また「慰安婦問題」を取り上 げたNHKの番組の内容を変更するよう圧力をけ、大きな社会問題を引き起こした経緯も 忘れてはなりません。「私は闘う政治家を目指す」などと公言してきましたが、「誰のた め、何のため」かは不明ですし、彼が「闘う政治家」として活動すればするほど政治は悪 化・劣化の方向に向かって暴走を重ねてきました。
【2】改憲に走る安倍・自民党
自民党・政府は、改憲に執念を燃やしてきましたが、それ自体が憲法違反です。憲法第9 9条の「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」との規定に違反することは明らかです。安倍政権のもとで憲法と国民無視の政治が行われてきましたが、このような事態を生みだした要因の一つが小 選挙区制であることを指摘しなければなりませんが、ここでは指摘だけにとどめます。
【3】消費税は悪税の見本
もともと消費税という税制は、ヨーロッパで戦争の費用を捻り出すために始まったもので した。日本の場合は、「財政の健全化」が売り物で導入されましたが、ためにする宣伝に 過ぎず、自民党政治のもとで年々5兆円を超える規模の軍事費を捻出するためと財界言い なりの上にアメリカの圧力も加わって財政破綻をきたし、消費税はその穴埋めのために導 入されたのです。内容も動機も決してまともなものではありません。 それに加えて消費税は、貧困者と大金持ちにも一律に同じ税率が適用されるという点で税 制の基本である「応能原則」に反する悪税の典型です。 悪いことに、消費税は1パーセントで2~3兆円規模の税収が挙げられるもので、政府・ 財界にとっては、「魔法の伺」でした。まるで放蕩息子に「打ち出の小槌」を与えるのと 同じですが、歴代保守政権にとっては、絶えずその魅力に抗しきれなかったのです。 前述のように、ヨーロッパで導入された消費税は戦争の費用捻出のために始められたもの ですが、日本の場合も同じような経過をたどりました。先に触れたように、「財政の健全 化」を売り物にして自民党政治のもとで年々5兆円を超える規模の軍事費や大型公共事業、 それに法人税の減税などによって生じ財政破綻の穴埋めを国民負担でカバーすることを目 的にして画策されました。「健全」どころか「よこしま」そのものです。 麻生副首相は、「ヒットラーの手法を真似ろ」などというとんでもない言辞を弄していま したが、これはアベ政権の本音でもあり、それだけでも内閣総辞職に値します。 森元総理は「日本は天皇を中心とした神の国」などと述べて辞任に追い込まれましたが、 安倍首相は、森元総理よりもはるかに根深い国粋者なのですから、安倍氏が自民党総裁で 総理の座に留まってきたこと自体が異常と言えるのではないでしょうか。 ここでもう一つ付け加えておきたいのは、消費税というのは、その負担者と支払い義務者 が同じではないという点でも決定的な欠陥税制なのです。と言いますのは、個人間の場合 は別として、企業間取引では多くの場合、消費税の最終的な負担は売り手と買い手の間で の交渉で決められます。そうなれば大企業と中小企業との間では力の差は歴然としていま すから、必然的に弱者である中小企業に負担が押し付けられるのです。 こうして消費税の負担を免れた大企業が海外に輸出した場合、払ってもいない消費税が還 付(?)されますから輸出大企業には法外な不当利益が転がり込むことになります。こと ほど左様に消費税というのは悪税の典型であり、麻薬のような存在です。安倍政権の下で 2014年に税率5%から8%へ、2019年に10%へと増税され、消費不況を一段と 深刻化させ、国民の暮らしと経済が痛めつけられ、貧困と格差を拡大させてきました。
【4】消費税導入後の経緯
政府や財界は「社会保障と財政健全化のため消費税増税が必要」などと主張してきました が、消費税を導入した1989年と2020年を比べても国の税収はほとんど変わってい ないのです。なぜかというと、消費税導入と引き換えに大企業の法人税と大金持ちの減税 が実施されたからです。要するに消費税というのは、庶民の負担と犠牲で大企業を救済・ 優遇する道具になっているのです。 一般的に資本主義の社会では格差と貧困の拡大が避けられません。この矛盾を是正するた めに世界各国で所得再配分機能のために色々の施策を実施してきました。ところが日本で は消費税が導入されたため格差と貧困が一段と拡大するという逆の結果を招いたのです。
【5】消費税は悪税の典型・廃止を求めよう
消費税が8パーセントから10%に引き上げられた結果、2013年以降家計の消費も実 質賃金も大きく落ち込み、経済成長の大きな障害となり、矛盾をさらに拡大・助長する結 果を招いてきました。 私たちは、消費税増税そのもにストップをかけるとともに労働者が8時間働けば普通に暮 らせる社会、暮らしを支える社会保障、お金の心配なく学び、子育てができる社会を目指 したいものです。 そのためにも安倍政権が計画してきたアメリカ製の高額兵器1兆円を超える「爆買い」や 国民の暮らしを破壊する軍拡計画にストップをかけることが不可欠であるだけでなく、そ れは国民の当然の権利でもあります。そのためにも世論を結集して今こそ平和憲法を守り 抜くことが求められています。
2020年9月10日 蓮井 治