2020年4月14日火曜日

   「福島原発避難者訴訟」「いわき市民訴訟」

       元の生活を返せ!

福島原発避難者訴訟 仙台高裁判決を受けて
     
                  いわき市民訴訟 原告団長 伊東達也


【2020年3月12日 仙台高裁前】
1.訴訟に至るまで
 
2011311日発生した東京電力福島第一原発の過酷事故直後から、避難勧告の出た原発立地とその隣接町村民がいわき市にも多数避難してきましたが、時間とともにその人数は増え続けピーク時には約24千人にもなりました。
 一方、いわき市でも一時は6割を超す16万人余の市民が避難をしましたが、数か月後にはその多くの人々が戻りました。
 やがていわき市に避難してきた強制避難者と被害を受けたいわき市民から、事故を起した国と東電に謝罪を求めるとともに正当な損害賠償を求める声が強まり、20111223日に『原発事故の完全賠償をさせる会』が避難者も含めて200人の参加で結成されました(のちに会員は約900世帯・2千名となる)。
 この運動に賛同するいわき市の広田次男弁護士といわき市出身で東京で活動している小野寺利孝弁護士が多数の弁護士に呼びかけ、弁護団が結成されて、いわき市内を中心に次々に相談会が開始されました。弁護団とさせる会の役員は要求をまとめ、東電との交渉を続けましたが、謝罪や賠償の基本的問題で暗礁に乗り上げ、訴訟が構想されました。
 この中で、強制避難者といわき市民は原発被害者として同じだが、被害の実態では異なることもあり、その被害の実態に即した二つの訴訟を同時並行的に進めることになりました。強制避難者は少しでも早い解決が求められていることなどもあり、避難者訴訟は東電のみを被告にし、いわき市民訴訟は国と東電を被告にしました。以後、いわき市民訴訟原告団は避難者訴訟を支援してきました。

2.福島地裁いわき支部が不当判決
 
以上のような経過を経て、主に広野町、楢葉町、双葉町、南相馬市小高区などに住んでいた77世帯・216名で2012123日福島地裁いわき支部に提訴、約53カ月後の2018322日に判決が出ました。
 この判決は、故郷喪失など国の指針を超える損害も認めたものの、「津波到来の現実的な可能性はないという認識は、著しく合理性に欠けるとは言えない」と東電の責任を軽視し、損害額も被害の実態にあっていない不当のものでした。

3.仙台高裁が東電を断罪
 
そのため原告団は仙台高裁に控訴しました。東電も国の指針を超えた判決は受け入れられないとして控訴。2年間の審理を経て2020312日に、全国約30か所で闘われている集団訴訟では最初の高裁判決が出ました。
判決は一審判決を覆し、「市民団体からも繰り返し津波に対する抜本的対策を求める申し入れがなされたにも関わらず、具体的な対策工事の計画または実施を先送りしてきた」ことも指摘し、「痛恨の極みと言わなけらばならない」として、慰謝料の認定に当たって重要な考慮要素とされるべきとしました。

4.東電は原告団の声を無視して最高裁に上告

 仙台高裁判決を受け、原告団・弁護団は「本件判決を真摯に受け止め、上告せず、原告らの求めに応じ、話し合いによる解決に努めるべき。事故発生からすでに満9年を経過したいま、いたずらに上告してこれ以上被害救済を先延ばしにして、原告らの苦痛を長期化することは、もはや許されない」と話し合いを申し入れましたが、東電は聞く耳をもたず拒否して上告に及んでいます。

5.被害者全員の救済を求める運動にご支援を

 最高裁の判決は5カ月程度で出るものと見られています。いま、東電の態度を変えさせるため、被害者全員の救済に向けて第二陣・三陣の勝利判決と四陣の闘いを見据えて戦線を一層広げていくことにしています。
 同時に今後、いわき市民訴訟はじめ全国各地で進められている集団訴訟の地裁判決や高裁判決が続々出ることになります。
これらにも皆さんのご支援を心からお願いします。

(注1)伊東達也氏は、原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員・全国革新懇話会代表世話人です。

(注2)「避難者訴訟」「いわき市民訴訟」の詳細は、福島原発被害弁護団のホームページでご覧ください。こちらをクリックしてください「福島原発被害弁護団」