2019年10月5日土曜日

    日本の真の独立のために
                    
                       蓮井  治

(1)ポツダム宣言の原点に立ち帰えろう

言うまでもなく、我が国の戦後の出発点は、我が国の15年間にわたる侵略戦争が完全に破綻し、ポツダム宣言を受諾した1945年7月26日であった。ポツダム宣言の受諾によって「ポツダム宣言」という国際条約が成立したことを意味していると考えられる。
同宣言では、「日本の無責任な軍国主義勢力が世界から完全かつ永久に駆逐されることが世界の平和と安全にとって不可欠である」と指摘し、その確証が得られるまでは日本の占領を継続するとの意思を表明しているが、同時に、「日本国民の自由意思に従って平和的で責任ある政府が樹立された場合には、アメリカ占領軍は、直ちに日本から撤収すること」も確約している。
ここで大事なこととして付言しておきたいのは、ポツダム宣言では「カイロ宣言」の条項は履行することを明確に再確認していることである。では「カイロ宣言」とはどのようなものであったかを確認しておきたい。カイロ宣言は,1943年に連合国のアメリカ、イギリス、中国の首脳がカイロに集まって第2次世界戦争の目的と戦後処理の原則などを取り決めたものであった。同宣言の内容を簡略に整理すると以下の通りである。
 「イ」今次対日戦争の目的は、「日本の戦略戦争を抑止し、かつ罰するためであり・・日本が暴力及び貪欲により略取した一切の地域から駆逐さるべし」とうたい、「みずからは領土拡張、その他の何の利得も求めない」
 「ロ」ヤルタ会談に基づき、スターリンの要求に従って千島列島をソ連に引き渡す。
因みに、このスターリンの要求自体がカイロ宣言の基本に真っ向から違反すること、そしてそのことが北方領土が未解決ままになっている根本の原因となっているのである。

(2)「日本の軍国主義」が駆逐・一掃されても居座る米軍の対日占領

戦後の我が国は、新しい憲法が制定され、第9条によって「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」が確定され文字通り軍隊は完全に廃止された。
先にふれたように、このような条件のもとでは、アメリカの占領軍は直ちに撤退すべきである。ところがアメリカが日本から撤退する気配は無く、自民党・日本政府は唯の一度もアメリカ軍の撤退を求めたことはない。このままではアメリカの日本占領は未来永劫に続くと懸念される。

(3)アメリカの指示で作られた日本の軍隊

1950年に朝鮮戦争が起こると、マッカーサー指令によって「警察予備隊」が作られ、1950年の「安保条約」や1954年の「日米相互防衛協定」などによって強化され、1952年に保安隊、1954年には陸・海・空の自衛隊三軍に改組され、その後も人員や装備の強化・増強が進められ、今日では世界でも有数の軍隊組織にのし上がっている。
それにしてもアメリカが日本の再軍備に力を入れたその目的と狙いをここで明確にしておこう。それは単に日本が「世界の中の一国として正当に認められるために軍隊を持つことが不可欠」などという一般論に従ったものではない。アメリカの狙いは、再軍備された日本の軍隊をアメリカの戦略の中に組み込んで利用するために他ならない。
改めて言うまでもなく、憲法第9条では「戦争の永久放棄」をうたい、「陸・海・空軍その他の戦力の保持も認めない」と規定している。因みに在日米軍の存在も憲法9条が禁止している「その他の戦力」に当たるものであることは明らかである。
驚くべきことに、アメリカは、1948年に「日本国憲法第9条」と「ポツダム宣言」を無視すると決めている。身勝手・横暴極まれりである。そもそも戦後のアメリカの世界戦略の中心は、圧倒的な軍事力によって世界制覇を目指すものだが、そのために日本全土に米軍基地を構築することが戦略上も不可欠と判断した。しかも基地を自国に置くよりも日本に置いた方がはるかに安上がりでもあるからだ。安上がりどころか日本政府からは”思いやり予算”など超優遇されている。アメリカの世界戦略の立場と地勢的条件でも日本に基地を持つことが不可欠との判断がある。

(4)画期的な「伊達判決」

ここでアメリカにとって在日基地の存在が世界戦略を進める上で如何に不可欠の特権かを物語る一つの事件を想起しておきたい。
1955年に米軍の要請で立川基地の拡張が企てられたことが事件の始まりだった。それは米軍がジェット機を採用するために滑走路を拡張する必要があり、砂川町の中心部の農地を接収する計画が進められた。政府は、農地の接収を「土地収用米軍特別措置法」の発動で行おうとし、砂川町長に対して収用手続きに入るよう命じた。これに対して宮崎町長は反対を表明すると同時に、町議会でも全員一致で基地拡張に反対するという決議を挙げた。これをめぐり、農民、一般市民、支援する労働組合や学生たちが加わり、強制収用を阻止する大闘争に発展する。
その過程で基地内の測量を阻止しようとした地元民や学生が数メートル基地内に入ったことを捉え、政府が安保条約に基づく刑事特別措置法を盾に23名の労働者、学生を逮捕し、うち7名を起訴したのが砂川事件だった。裁判の中で伊達判決が出された。そのポイントは、「安保条約に基づく米軍は憲法によって保有が禁止されている憲法違反の存在である」として、全員無罪という画期的な判決を下した。胸のすくような明快な論旨とその結論である。
この「安保は憲法9条違反」という判決は、アメリカ政府に甚大な衝撃を与え、常軌を逸した対応にでた。先ずは判決の出た直後にマッカーサー駐日大使が藤山外務大臣に面会し、二審を飛び越えて最高裁に跳躍上告を求める一方、田中耕太郎最高裁長官と極秘に会談し、長官に圧力を加え、善処(?)を要求したのである。田中長官は、アメリカの要求に応えて伊達判決を却下する判決を下した。
念のためこの事件が教えることを一つ付け加えておきたい。それは「在日米軍によって日本を守ってもらっている」というのは「神話」に過ぎないということ、マッカーサー大使の行動は「米軍が日本に駐留していること」自体がアメリカにとっては、かけがいのない利権であることを問わず語りに示している。そもそも他国の安全を守るなどという重大な責任を引き受ける国などありえないことであり、それを裏付ける契約など存在しないことは言うまでもない。

(5)国民の命と福祉を削って加速する「安倍軍拡」

国民には消費税増税の押し付けを狙う一方で、米トランプ政権いいなりに米国製高額兵器の爆買いが止まらない。安倍内閣が閣議決定した新「防衛大綱」では米国製ステレス戦闘機F35を新たに105機を買い増し、過去に購入を決めた42機と合わせて、合計147機とする。そもそも我々国民にとっては、F35と言う戦闘機をどのような目的に使うのかさえも理解できない。この他ミサイル迎撃システム{イージス・アショア」2機、早期警戒機9機など、併せて1兆円を超える高額兵器の「爆買い」(支払いは前払い)を決めている。平和憲法を持つ日本が国民の暮らしや福祉を削り、増税と暮らしを破壊する軍拡は決して許すことはできない。

(6)アメリカ軍の日本撤退を要求しよう

冒頭で述べたように、戦争が終わった1945年、日本はポツダム宣言を受諾し無条件降伏した。そのポツダム宣言には、「日本国民の自由に表明した意思に従い平和的で責任ある政府が樹立された場合には、米占領軍は直ちに日本から撤収すること」が確約されている。私はこれを「ポツダム・ルネッサンス」として提唱したい、そして在日米軍の即時撤退を要求すべきと考える。

                 2019年9月25日          
                              蓮井 治